ゲレクシスは全体的にはコミカルな漫画です。
古谷実先生の漫画は稲中の後、
どんどんシリアスになっていきました。
それはそれで面白い内容になってていい漫画なのですが、
稲中のノリが懐かしくなる時があるじゃないですか。
そんな中ゲレクシスは最初1話を読んだ時点で笑えるシーンが多く、
「ギャグ漫画に戻ってきてくれた?」
と思い、喜びました。
ゲレクシスの1話はお試しで読めるサイトが多々あるので、
読んでみて頂ければ雰囲気は伝わるはずです。
DMMブックスだと1話は全部試し読みできました。
【DMMブックス】
基本的にシニカルな感じですが、
ストーリーはシニカルな中で笑いもあるストーリーが
ずっと続きます。
ただ、所々で読者への問いかけを感じたり、
問題提起があったり、「哲学」に近い作品になりかけます。
それでも基本的にシニカルな中に笑いありな展開が続くので、
シガテラのように問題提起と深いテーマがあるものの、
人によっては展開自体が辛い、続きを読みたくないと
思ってしまうようなことはまずないでしょう。
なので、古谷実先生の漫画を
「稲中は面白かったけどそれ以降は気持ち的に読むのがきつくなった・・・。」
と思った方にもおすすめできる漫画です。
私も最後まで読んだものの、シガテラ辛すぎ・・・。と思っていたタイプです。
個人的なゲレクシスの評価はとても面白い漫画で
作者古谷先生の快作だと思ってます。
ゲレクシスのあらすじ
ゲレクシスの主人公は大西たつみ店長。
中年男性で、バウムクーヘンのお店の店長です。
大西店長は、
40になりある人に恋をし、バイト店員の倉内ゆう子に相談します。
この辺りが1話で展開されています。
そして、店長は公園に立っている恋をした女性に話しかけにいきます。
しかしそれは女性の姿をしているものの、
女性ではなく、分かりやすく言えば
少しコミカルな見た目の言ってみれば「化け物」のような見た目の存在でした。
そして、大西店長自体も「化け物」と似たような姿に変わってしまいます。
店長が恋をしていた女性に見えていた人物は
「モウソウ」というキャラでした。(男)
モウソウは言いました。
「人間には他人の目が必要」「これが正気でいるコツ」、と。
やがて、二人は公園を去り、
謎の山にたどり着き、「正気」と名乗る店長と似た見た目のキャラクターに出会います。
正気も仲間になり大西店長達3人は、山に入り、民家を発見。
純平という3人とはまた少し違った見た目のキャラクターに会います。
モウソウや正気はわりと変なキャラですが、
純平はとても温厚な好青年です。
ただし、漫画によくある
文武両道の好青年ではありません。
悪く言えば、「いい人」なだけの人物です。
優しくておっとりしているいい人。
でも能力的に特に秀でた所があるわけではないかも?
そういうキャラです。
三人は
「我々は人に見られると終わり」
ということを知ります。
また、化け物のような見た目になってしまった理由などを知っていそうな謎の木が漫画に出てきます。
ほんとに木です。
そしてその過程で、
自分達のような見た目になる人は「ゲレクシス」と呼ばれ、
「この世にいてもいなくてもいい比率が完全に
完璧に半々になった人間が稀にこうなる」
ということを知ります。
店長はバームクーヘンを焼いて20年以上の経歴を持ち、
バームクーヘンに今までを捧げていた人物で、
自分のバームに自信を持っています。
ところがモウソウや純平にはそういう所がありません。
彼らはコミカルなキャラクターで、
読者視点で見る彼らは愛せるキャラクターです。
でも、彼らは
「この世にいなくてはいけない人物率が50%以上あるか?」
と聞かれたら「うっ・・・」と思ってしまう一面を持った人物達です。
何度も言いますが、彼らは漫画によくいる文武両道だったり、
一芸に秀でている感じがありません。(店長以外
漫画にいると愛すべきキャラクターになりますが、
リアルで会った時に初見でどう思うかと言われたら、
どうなんだろう?と思ってしまう感じがあったりします。
物語は佳境へ
モウソウは「他人の目が必要」と言っていましたが、
ゲレクシスは「他人に見られると終わり」です。
これを大西店長達は知っていましたが、
やがて彼らは他人に見られてしまいます。
他人に見られてもすぐに終わりというわけではないので、
それまでの間は好き放題やろう!と考えます。
と言っても問題を起こすわけではありません。
文武両道などではなく、よくいそうな素朴でいいやつな彼らの取ろうとした行動は、
店長自慢のバームクーヘンを食べたい
好き放題に食事したい
という、とてもささやかなものでした。
山にいた時はまともな物が食べれなかったからです。
好き放題と言っても、
単にバイトの倉内さんを呼んで
大西店長の店にあるお金を使うだけ。
ごくごく良識的な行動です。
ゲレクシスのストーリーは彼らのこの行動の後、
唐突な夢落ちのような形で最後に向かっていきます。
この唐突に見える終わり方もあり、ゲレクシスは打ち切りだったのでは、とよく言われています。
個人的には古谷実先生の他の作品もわりと短めの漫画は多いのでどうかなあ、と思ってます。
いなくなったはずの純平が夢の中に現れ
「大西さんは違うみたいですよ
大西さんだけ原因不明ですって
わからないんですって。」
大西店長にこう言い、物語はラストに向かいます。
ゲレクシスは2巻までのとてもシンプルなストーリーの物語です。
でもこの漫画は激しく訴えかけてくるものを感じさせてくれます。
理解されること、理解されないこと
上にも書きましたが、
ゲレクシスになってしまった人は
「人に見られると終わり」です。
物語から退場します。純平もそれが理由でいなくなりました。
一方、モウソウが最初の頃に言った通り、
「人は他人の目を感じない環境では正気を保てない」
という認識は社会的に誰もがうなづけることだと思います。
ゲレクシスになってしまった人達側はこれを理解していますが、
当然ゲレクシス以外の人類はこんなことは知りません。
そもそもゲレクシスという存在自体を知らないはずです。
ゲレクシスになった人達は、
見た目がちょっとコミカルな化け物になるので、
大西店長達を見た人達は、まず人間として認知しないでしょう。
ゲレクシスはゲレクシスと他の人達全てを理解しています。
少なくとも大西店長達ゲレクシスはゲレクシス以外の人達を排除しないし攻撃しません。
でもゲレクシスな人達にとってはゲレクシス以外の人達は危険です。
その人達に見られただけで終わりなのですから。
人間は他人からただただ攻撃、排除されるだけだとしたら、
他人の目があっても人は正気を保てないでしょう。
ずっと攻撃、排除されて正気でいられますか?って話です。
人に見られるという書き方になっていますが、
これはつまり人に理解される、ということだと思います。
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正気を保つコツ
排除される側の人達はそれ以外の人達をうっすらとでも理解していますが、
排除する側の人達は排除される側の人達を基本的に理解することがない。
排除する側の人達は排除される側の人達がいなくても問題ないけれど、
排除される側の人達にとっては排除する側の人達が必要。
これはまさに現代の縮図と言えるでしょう。
ゲレクシス達は数名しかいない仲間達の中で、
かろうじて他人の目を作っています。
大西店長は夢落ちの後、ゲレクシスの仲間達のことを
素晴らしいやつらだったと言います。
大西店長は夢の中で純平の言葉を聞き普段の生活に戻った後も
また彼らに会いたい。
とずっと思っています。
もし自分がまた最初のゲレクシスになる直前、
恋をした女性に会うために公園に行く時に戻れたら、
再び彼らに会いに行く。
大西店長はそう考えています。
純平が大西店長の夢に現れ、
「大西さんは違うみたいですよ
大西さんだけ原因不明ですって
わからないんですって」
と言いました。
排除される側のゲレクシスの純平は、
同じゲレクシスだった大西店長に優しく接していました。
重要なのは本来ゲレクシスにならなかったはずの大西店長が、
ゲレクシスになったことで純平やモウソウに出会い、
彼らが大好きになる、ということだと思っています。
排除する側される側と分けるなら、
大西店長は間違って排除される側に一時的に振り分けられていた人物です。
排除する側、排除される側、
本当は分かりあえるはず。
排除されている人達にとって排除する側の人達は必要なはずですが、
排除する側に立ってしまうと彼らは風景になってしまうのが現実ではないでしょうか。
まさにゲレクシスの世界です。
でも、彼らは仲間として接すると
一人一人が魅力的な素晴らしい人達です。
そのことを大西店長の体験として伝えてくれている漫画作品がゲレクシスだと思います。
排除する側が排除しないことが重要。
排除する側に見られ存在を認識されることが、
排除される側にとって攻撃されるだけという状態にならないこと、
排除する側から認識されることが、排除される側にとっての終わりにならないことが大切。
ゲレクシスが教えてくれているのはこのことだと私は思っています。
まとめ!ゲレクシスの内容、感想。古谷実先生の快作!
ゲレクシスは話としては面白い話だし、
シニカルな中にも笑いもたくさんあるのでとてもいい漫画だと思っています。
哲学的な意味合いが含まれている感じもあるので、
そういう意味で古谷先生の快作だと私は思っています。
ストーリー的には大西店長の恋から始まり、
他のゲレクシス達と出会いゲレクシス以外の人達に見られてしまい、
最終的に店長の夢オチのような形で終わりに向かう。
そういうシンプルな物語です。
でもこのシンプルな物語は社会の中で排除する側と排除される側との関係や
それをどうすべきか考えさせられるそんな古谷先生の快作です。
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