ライナーが「俺が鎧の巨人でこいつが超大型巨人ってやつだ」と告白したのはなぜ？

『進撃の巨人』の物語の中で、

ライナー・ブラウンが自分が鎧の巨人であることをエレンに告白するシーンは、

シリーズ全体の中でも特に衝撃的な瞬間の一つです。

この告白とタイミングの背景には、

いくつかの重要な要素とキャラクターの心理状態が絡んでいます。



この記事では、なぜライナーがあのタイミングで正体を告白したのかについて、

ベルトルト、ジーク、アニ、エレンとの関係、そして時間的な問題を含めて

深掘りして考察します。

「俺が鎧の巨人でこいつが超大型巨人ってやつだ」は何話？

このライナーが自分の正体は鎧の巨人だと告白するのは、

漫画では42話、漫画の単行本だと10巻のシーンです。
進撃の巨人（１０） (週刊少年マガジンコミックス)


この中の「こいつ」とは隣にいたベルトルト・フーバーのことです。

アニメでは進撃の巨人season2 31話「戦士」に収録されています。

ライナーの心理状態と告白の背景

内部の葛藤と二重人格

ライナーは、幼少期からマーレの戦士として育てられました。

パラディ島以外の世界各国では基本的にエルディア人（パラディ島の人の大半はエルディア人）を

敵視し、憎んでいました。

「島の悪魔」と呼ばれるのはこの感情と歴史的な背景が理由です。


ライナーもその例外ではなく、当初はエレンを含むパラディ島の人達を

「島の悪魔」と考え、排除すべき存在と捉えていました。


ライナーやベルトルトやアニがマーレの命令でパラディ島に侵入したのは

パラディ島からマーレへ「座標」と呼ばれている「始祖の巨人の能力」を手に入れることでした。

始祖の巨人の能力者を連れ去るということです。



しかし、目的達成のために調査兵団の一員として過ごす中で、

ライナーやベルトルトはエレンやアルミンやサシャなど調査兵団の仲間たちとの絆を深め、

内心で大きな葛藤を抱えるようになります。


当初島の悪魔で憎むべき存在だと思っていたパラディ島の人達は

みんな自分達と同じ普通の人間だったからです。


エレンや仲間たちとの友情と、自らの使命との板挟みに苦しむライナーの精神状態は、

次第に不安定になっていきました。


元々「マーレの戦士」としての使命を抱えていたライナーは、

パラディ島で「調査兵団の兵士」になり、その中で精神的に苦しんだ結果、

時々「戦士」になったり「兵士」になったりする分裂的な二重人格状態になるようになりました。

この内なる葛藤は、ライナーがなかば衝動的に告白する一因となったと考えられます。

プレッシャーと焦燥感

ライナーとベルトルトがマーレの使命を果たすためにパラディ島に潜入してから、

かなりの時間が経過していましたが、

始祖の巨人の能力者（実際はエレン・イェーガー）を捕らえるという任務は

未だ達成されていませんでした。


ライナーもベルトルトもアニも知性巨人の能力者なので、

寿命が13年になるという運命を持っています。


そのことも含め、ライナー達は時間を意識する必要がありました。

それに伴うプレッシャーが彼らの行動に影響を与えました。

特にライナーは、戦士としての使命と仲間たちとの絆の間で揺れ動き、

さら時間的な制約もあるため、心理的な負担がピークに達していたと考えられます。

告白のタイミング

戦士としての覚悟

ライナーが告白を決意したタイミングは、

彼が内面的に戦士としての覚悟を再確認した瞬間とも言えます。

調査兵団としての任務中に、エレンやミカサ、アルミンと共に行動し友情を深めていましたが、

それでもライナーは「マーレの戦士」であることを優先します。

告白は、その覚悟の表れであり、自らの使命を果たすための第一歩でした。

ベルトルトとの協力と言葉

ベルトルトとライナーは、常に行動を共にし、お互いを支え合ってきました。

ライナーの告白のタイミングは、ベルトルトの言葉が切っ掛けでした。


ライナーほどではなくても、ベルトルトもまたエレン達調査兵団の仲間との友情の中で

「島の悪魔」であり本来敵なはずのエレン達との関係に苦しんでいました。


二人の間には深い信頼関係があり、

ライナーが鎧の巨人であることを告白し始めた時も

「やるんだな！？今・・・！ここで！」
（進撃の巨人 漫画 42話「戦士」）

と、ベルトルトはライナーの覚悟を確認した上で、

ライナーと一緒にマーレの戦士としてエレンを連れ去るために行動を開始しています。

ベルトルトとの関連

使命を共有する同志

ライナーとベルトルトは、共にマーレの戦士として育ち、

エルディア人は「悪魔」だという感覚を持っている人物です。


また、同様の感覚のアニは憲兵団になりましたが、

ライナーとベルトルトは共に調査兵団に入っているため、

ライナーとベルトルトの絆はアニとの絆とは別レベルの濃さがあります。
（ただ、ベルトルトはアニに恋愛的な意味で好きな感じがあるのでそれはそれでまた別かも）


感覚と状況を共有することで、二人の間には強い絆が生まれました。


ベルトルトは、ライナーの内なる葛藤を理解しながらも、

ライナーが「戦士」になったり「兵士」になったるすることに危機感を感じていました。


二人には同じマーレの戦士としての使命があり、告白の瞬間も、

ベルトルトはライナーの行動を支持し、共に戦う覚悟を決めていました。

サポートと圧力

ライナーが鎧の巨人であることをエレンに告白した直接のきっかけはベルトルトの発言です。

別冊マガジン連載当時は唐突な感じのしたこのベルトルトのセリフは

ライナーと自分はもうすぐ故郷に帰れる、そのための条件が整いつつあることを示唆しています。


ただ、この発言をベルトルトが行う直前、

ライナーは「調査兵団の戦士」の状態になっていて、

ベルトルトはそれを見て焦りを感じるような表情をしていました。


上記のセリフをベルトルトが言った時も

ベルトルトは汗をかいていて焦っている、もしくは困っているような描写があります。


このベルトルトの発言は、ライナーに対して心理的な圧力をかけたとも言えるでしょうし、

励ましているとも言えるでしょう。


それもあくまでマーレの戦士としての使命を達成するためのものでした。

いずれにしてもベルトルトの存在は、ライナーにとっての一つの精神的な支えであり、

一方圧力にもなっていると言えます。

そのベルトルトの言葉はライナーの告白という大胆な行動に踏み切る要因の一つとなったのです。

ジークとの関係

上官としての影響力

ジーク・イェーガーは、マーレの戦士隊の指導者であり、

獣の巨人の能力者です。


戦士隊の隊長なので、ライナーやベルトルト、アニに対して大きな影響力を持っています。


ジークは冷静かつ計画的なリーダーであり、

彼の存在はライナーたちにとって心理的な圧力となっています。

ライナーの告白のタイミングは、ジークがパラディ島にやってきたことも

間接的に作用していたと考えられます。

ライナーの告白とジークとの関係

ジークはライナー達がパラディ島に潜入してから5年後にパラディ島に来ました。


ジークがパラディ島にやってきた理由は、

ライナーやベルトルトやアニがパラディ島に派遣されてから数年経ったにも関わらず、

音沙汰がなかったからです。


ライナーは獣の巨人（ジーク）が来ていることをウトガルト城の攻防戦で知りました。

この時点でライナー達はマーレからの使命を達成できておらず、

ジークが来て助力してくれることに期待はあったかもしれませんが、

上官であるジークがやってきたことに焦りを感じないわけがないと考えます。

精神的なプレッシャー

ライナーは元々どちらかと言えば運で鎧の巨人の能力者になれたような形でした。


このパラディ島への潜入作戦が失敗した場合、

鎧の巨人の能力を剥奪されることも考えられる状態です。

実際、ライナーはマーレへの帰還後、一時鎧の巨人の剥奪の危機にさらされていました。


派遣されてから時間が経ち、獣の巨人になったジークの姿を

ライナーは塔の上から確認しました。


ジークがパラディ島に来ていることをライナーが確認したのは、

ライナーが鎧の巨人であることを告白したすぐ前です。


そのため、ライナーの告白にはジークが来ていることを確認したことも

理由になっていると考えられます。

アニとの関係

仲間としての絆

アニ・レオンハートは、ライナーやベルトルトと共にマーレの戦士として行動してきた仲間です。

彼らは共に過酷な訓練を乗り越え、戦場での経験を共有してきました。


ベルトルトと比べればライナーにとってのアニは薄い存在かもしれませんが、

ほぼ敵しかいないパラディ島の中に潜り込むことになったライナーにとって

同じ使命を持って潜り込むことになったアニは

ライナーにとって大きな支えとなっています。


同時にアニはライナーをせかすような言動をすることが多かったため、

ライナーの告白に対する心理的な後押しとなったと考えられます。

戦士としての冷徹さ

少なくとも進撃の巨人の物語の前半のアニは冷静で計算高い少女です。

目的達成（始祖の巨人の奪還）を何が何でもやり切る、という強い意志を感じさせます。

その姿勢はライナーに対しても影響を与えています。


アニの冷徹さは、ライナーにとって

「目的を達成するためには手段を選ばない」

という覚悟を促す要素となっています。

元々、ライナー達から見ればマーレ国に与えられた使命を達成するということは、

エレン達を裏切ることを意味します。


パラディ島に長くいることになってしまったライナー達がエレン達を裏切り、

マーレの戦士としての使命を達成するには

どうあがいても冷徹さが必要になります。


アニは何度もライナーを叱咤激励（というかほぼ叱咤）していて、

アニの存在はライナーに使命感を再認識させる一因だったと考えます。

それはライナーが鎧の巨人であることを告白する決断の後押しにもなっていると思います。

内なる葛藤と目的の共有

アニもまた、調査兵団の一員として過ごす中で、

内なる葛藤を抱えていました。


アニはアニで絶対に目的を達成して故郷に帰るという強い気持ちを持っていますが、

だからと言って、パラディ島に長くてエレンやアルミン達に何も思わないはずがありません。


特にアルミンとは後半に恋愛関係を思わせる描写もあることから、

アニもまた悩んでいたはずです。


ライナーもベルトルトもアニもそれぞれが葛藤を抱え、それでも互いを叱咤激励しながら、

それぞれの葛藤を間近で見ていました。


その感覚は内面の苦しみを共有する仲間として、互いを意識するものとなったことでしょう。


ライナー達は同じ目標を持ってパラディ島に潜入しているため、

ライナーの成功は他の二人の成功にも繋がります。


ライナー達3人はそれぞれが他のメンバー達と感覚を共有し、

同時に他のメンバー達にも作戦の成功を願っています。

エレンとの関係

仲間としての絆

ライナーとエレンは、調査兵団の訓練兵団時代から共に訓練を受け、

戦場での経験を共有してきました。


この期間において、ライナーはエレンに対して兄貴分のような存在として振る舞い、

エレンもライナーを信頼していました。


序盤の立体軌道装置のテストを全くこなせないエレンが

ライナーやベルトルトにアドバイスを求めた時の交流はそれを物語っています。


この絆は、ライナーにとって大きな葛藤の原因となったことでしょう。


ライナーの使命そのものが実はエレンの敵であるという事実はライナーを苦しめ、

エレンにアドバイスをしたり、エレン達と共に戦う中で友情や絆が育まれるほど、

いずれパラディ島を裏切ることになることの葛藤は、

ライナーの混乱と焦りの原因になったはずです。

信頼の裏切り

エレンとの関係を出来るだけ壊したくないという思いは、

ライナーの告白の内容に表れています。


最初、ライナーがエレンに自分が鎧の巨人でベルトルトが超大型巨人であると告白した時、

ライナーはエレンに付いてきてほしいと提案しました。

力づくではなく、提案という感じです。


エレン達は基本的にライナーを信頼し、ライナー達もエレンを良く思っていましたが、

この信頼を裏切ることへの罪悪感が次第に彼の心を蝕む原因ともなります。

それでもライナーは、自分の正体を明かすことで、エレンに対して真実を伝え、

自らの使命を果たす決意を固めました。

使命感と友情の狭間で

エレンとの関係は、ライナーにとって友情と使命感の狭間で揺れ動くの要素の一つでした。


最初はエレンが知性巨人の能力者であるかも分かりませんでしたが、

ライナーの告白の直前に

ユミルがマルセルの持っていた顎の巨人の能力者であることが分かったため、

エレンの巨人能力が始祖の巨人の能力である可能性が高まっていました。



これは同時にライナー達にとっては

エレンをマーレに連れていかなければ故郷に帰れないということを意味し、

ライナーにとってはよりによって親しくしていたエレンが対象だったことは

大きな意味を持ったことでしょう。


ライナーから見ればエレンに交渉でマーレに来てほしいと頼んで

エレンが来てくれることを期待したいところですが、

エレンが受け入れるわけがなく、エレンにとっては攫われるか攫われないかの選択に過ぎません。


エレンを捕らえることがライナーの使命でありながら、

同時に彼はエレンを仲間として大切に思っていて、

この複雑な感情が、ライナーの告白の中身に影響を与えたと考えます。


ライナー自身が鎧の巨人の正体だと告白したのも、

出来るだけ穏便に済ませたかったからなのでしょう。


そしてこの思いは焦りにも繋がり、ライナーの兵士と戦士の混乱や、

それを見たベルトルトのもうすぐ故郷に帰れるという言葉を産み、

その言葉を聞いてライナーが一気に告白するという流れに繋がったと考えます。

時間的な問題

寿命とマーレの軍事力事情

ライナーもベルトルトもアニも知性巨人の能力者です。

知性巨人の能力者の寿命はそこから13年になります。


そのためライナー達にはあまり時間がありません。

ライナーの告白があった時、既にパラディ島に潜入してから数年経っていました。


マーレ国にとって知性巨人の能力はマーレ軍にとっての大きな戦力でした。

ジークが最初はパラディ島に来ていなかったのは、

知性巨人があまりにもマーレ本国から離れることに軍事上の問題があったからです。


ジーク達が残っていたとしても、

ライナー達がマーレ本国を離れていることは

マーレにとっては軍事的に良いことではありません。


これらの期限や問題は、

早く始祖巨人の能力者を連れて帰らねばならないというプレッシャーになり、

ライナー達にとって大きなものになったはずです。


時間的な制約が、ライナーの告白に繋がった要因の一つだと思います。

計画の失敗と焦燥感

ライナー達は、エレンを捕らえる試みを行ったこともありますが、失敗に終わっていました。


巨大樹の森での凄惨な戦いの中でアニは女型の巨人となり、

調査兵団のメンバーを多数攻撃しています。


その中でライナーはアニにエレンの場所を密かに教えるという協力をしていました。


それでも結果は大きな失敗になってしまいます。

この失敗の中でアニは多数の調査兵団のメンバーを亡き者にしていますし、

アニとライナーは密かに共謀しています。


そこまでしたにも関わらず起こったこのような失敗は、

ライナーの焦燥感や葛藤を増幅させたはずです。


それでも、失敗の中時間だけが過ぎていく中で少しずつ情報が集まり、

近いうちに故郷に帰れるというベルトルトの言葉を生みます。


そして、ライナーは告白という大胆な手段に出ることになりました。

というセリフはそれを物語っています。

戦士としての使命感

ライナーは、戦士としての使命感を強く持っています。

任務を果たすためには、どんな手段を用いても成功させる必要があるという意識があります。

ただし、ライナーはパラディ島での生活の中で

パラディ島の人達が「悪魔」でも何でもなく

自分達と同じ普通の人達だということを知ってしまいます。


それでもエレン達との友情があろうがなかろうが、

戦士としての使命を果たす、その使命感がライナーの告白を生みます。


時間的な問題が迫る中で、ライナーは告白を通じて一気に状況を変えることを選びました。

戦士としての使命感が、彼の告白のタイミングを決定づけたのです。

ユミルの正体

ユミル（始祖ではなくそばかすユミル）の正体が判明したことは、

ライナーが鎧の巨人であることを自白した大きな理由だったと考えます。

マルセルの顎の巨人

ライナー達がパラディ島に潜入したのは、「始祖奪還計画」のためです。

元々ライナー達は4人組で潜入していて、ライナー、ベルトルト、アニの他に、

マルセルという顎の巨人の能力者がいました。


ところが、マルセルはライナー達がパラディ島に入ってから壁に到達するまでの間に

無垢の巨人に食べられてしまいました。

（＝その無垢巨人は人間に戻り顎の巨人の能力者になる）


突然襲われたため、ライナー達はその場から逃げてしまい、

どの無垢巨人がマルセルを食べたのかすら分かりませんでした。


ライナー達が狙っていたのは基本的に始祖巨人の能力者です。

エレンが知性巨人の能力者であることはかなり前から分かっていましたが、

エレンがどの知性巨人の能力者なのかは確定的には分からなかったはずです。


その時点でマーレにない知性巨人は、

始祖の巨人、進撃の巨人、顎の巨人の3種です。


ウトガルト城攻防戦でユミルが顎の巨人になり、

マルセルを食べたのがユミルだったことが分かります。


ウトガルト城攻防戦の中で、エレンが持っている知性巨人は、

始祖の巨人か進撃の巨人に絞られたということです。


顎はマルセルがユミルに食べられる前までマーレのものでしたが、

始祖の巨人も進撃の巨人も長くマーレになかった知性巨人です。


エレンが持っているのは

元々マーレであるマルセルが持っていた顎の巨人の能力ではないということは、

仮にエレンが進撃の巨人の能力者であったとしても、

エレンをマーレに連れ帰ればそれなりの功績にはなったはずです。


ウトガルト城攻防戦はライナーの告白の直前なので、

ユミルが顎だと分かったのはベルトルトのライナーへのもうすぐ帰れるという言葉や

ライナーの告白の大きな理由になったはずです。

結論

ライナーが自分が鎧の巨人であることを告白した理由とそのタイミングは、

彼の内なる葛藤、仲間たちとの関係、時間的な焦り、ユミルが顎の巨人だと分かったことななど、

少しずつまとまってきた情報と複数の出来事が複雑に絡み合った結果です。


ライナーの告白とその直前のベルトルトの言葉は、

使命感と友情の狭間で揺れ動くライナーの心理状態を象徴するものであり、

その瞬間はシリーズ全体にとって非常に重要な意味を持つものです。

このシーンを通じて、ライナーのキャラクターの深みと物語の複雑さが

一層際立つこととなりました。


ライナーがかっこいいと評価されたり、逆に気持ち悪いと評価されたりするのは、

これらの心理的な強弱が強調される出来事が多数あったからでしょう。